① 川崎臨海部はカーボンニュートラルコンビナートを目指しています

カーボンニュートラルなエネルギー・素材を作る、新しいコンビナート
川崎臨海部のコンビナートでは、燃やしても二酸化炭素(CO2)を出さない水素を新たなエネルギー源として、電気や自動車の燃料、日々の生活に欠かせないエネルギーのカーボンニュートラル化の取組を進めています。
男性
洗剤や食品のボトル、不織布のマスクなど、生活に身近なプラスチックである石油化学製品やCO2自体も炭素(C)資源として活用する炭素資源循環型(カーボンリサイクル)のコンビナートを目指した取組を進めています。
女性
「カーボンニュートラルな素材やエネルギー」を生み出す、市民の皆さんの誇りとなるような「カーボンニュートラルコンビナート」を目指しています。
男性
気候変動問題

気候変動問題は、現在、世界の重要課題となっています。石炭や石油、天然ガスなどの化石燃料を燃やすと二酸化炭素(CO2)やメタンなどの温室効果ガスが発生します。

大気中のCO2の濃度が上昇温室効果ガスが増加すると、「温室効果」によって地球が温められ気温が上昇する「地球温暖化」が発生するとの科学者の分析が有力視されています。

温室効果ガスで、最も地球温暖化への影響が大きいのが二酸化炭素(CO2)です。そのため、世界では、二酸化炭素(CO2)排出を問題視し、二酸化炭素(CO2)を減らす方法について議論しているのです。

川崎臨海部の温室効果ガス排出量

二酸化炭素(CO2)は、化石燃料を燃やすと発生します。川崎臨海部では電力や熱源などのエネルギーとして石炭や石油、天然ガスなどの化石燃料を多く利用しています。

川崎市の温室効果ガス排出量のうち、川崎臨海部の主だった企業による排出量が73%を占めていますので、川崎臨海部では、温室効果ガス削減等の対策が大きな課題となっています。

川崎市の温室効果ガスの割合
参考文献:前田雄大著(2022年)「60分でわかる!カーボンニュートラル超入門」技術評論社
小山堅編(2023年)「エネルギー業界のしくみとビジネスがこれ1冊でしっかりわかる教科書」技術評論社
  • ア. 水素を使って
    できること
  • イ. 川崎臨海部が目指す
    コンビナートの未来
  • ウ. 新たな資源循環
    の仕組み

▶ 水素で変わる川崎臨海部

水素とは
水素
水素の最も注目すべき特徴は、石油や石炭などの化石燃料とは異なり、燃やしても二酸化炭素(CO2)を全く排出せずに、空気中の酸素と反応して水になるという、クリーンなエネルギーであることです。
男性
また、宇宙ロケットの燃料に使われるほど、エネルギーとして大きなパワーを持っています。
女性
さらに、水素は、水やほかの元素との化合物として、地球上に大量に存在しています。
男性
そのため、気候変動問題や資源エネルギー問題を同時に解決できる、究極のクリーンなエネルギーとして、「水素」に大きな期待が寄せられています。
女性
水素のエネルギー利用

水素をエネルギーに変換する方法として、燃料電池で電力を作り出す方法と、水素を燃やして使う方法(水素発電)があります。

水(H2O)にエネルギー(電力)を加えると、水素(H2)と酸素(O2)に分解されるというのが電気分解です。この反応を逆にして、水素と酸素を反応させると水ができる、その際にエネルギーが発生する。これが燃料電池の原理です。

家庭用燃料電池(エネファーム)や燃料電池自動車(FCV・Fuel Cell Vehicle)などで実用化されています。

水素発電では、水素を燃焼させた熱エネルギーを使って大型タービンを回し、発電を行います。

タービンの回転を電力に変える原理は、現在の火力発電とまったく同じで、化石燃料を燃やすか、水素を燃やすかの違いです。

現在、水素とほかの燃料ガスとを混合して発電する混焼発電について、実証が進められています。また、水素のみで発電する専焼発電の技術開発も進められています。

水素のエネルギー利用
参考文献:今村雅人著(2020年)「 最新水素エネルギーの仕組みと動向がよ~くわかる本」秀和システム
西宮伸幸著(2021年)「〔カーボンニュートラル〕水素社会入門」河出書房新社
水素で未来はこうなる!
水素で変わる未来のイメージ 未来は水素を飛行機、船の燃料にしたり、工場の燃料として使用するイメージ

▶ 現在のコンビナートは

現在は、海外から石油や天然ガス(液化天然ガス・LNG)、石炭を輸入し、それを原料として、発電したり、素材を作っていますので、川崎臨海部は、市内で最も多くの温室効果ガスを排出しているエリアとなっています。
男性
今後は、温室効果ガスの発生を抑えながら、生産活動を行うために、海外から水素を輸入して、それを原料に発電したり、廃プラスチックやCO2から素材や製品を作るなど、炭素(C)資源を廃棄せずに、循環していく仕組みを作ろうとしています。
女性
現在のコンビナートは化石燃料の生成が主流。日用品が作られたり、ガソリン等の燃料が作られる

▶ 2050年の川崎臨海部のコンビナートのイメージ

水素を活用した取組を一層推進し、今後、世界中のコンビナートの手本となり、市民が誇りと思う川崎臨海部の未来「カーボンニュートラルコンビナート」の実現を目指しています。
男性
2050年のコンビナートのイメージ 水素で循環資源を作ったり、カーボンニュートラルなエネルギーを供給する
CO2フリー水素とは

水素は利用段階では二酸化炭素(CO2)の排出はありませんが、化石燃料を改質して水素を作る製法では、製造段階で二酸化炭素(CO2)の排出がともないます。太陽光や風力といった再生エネルギーから作った電力を用いて水を電気分解すれば、製造段階においても二酸化炭素(CO2)を排出しない「CO2フリー水素」を製造できます。

参考文献:今村雅人著(2020年)「最新水素エネルギーの仕組みと動向がよ~くわかる本」秀和システム

▶ 新たな資源循環の仕組み

カーボンニュートラルに加え、資源循環型の経済システムであるサーキュラーエコノミーの取組が求められています。川崎臨海部は、現在もリサイクルの一大拠点となっていますが、今後はより広域的にプラスチック等を回収し、資源循環の輪に戻していく取り組みが検討されています。
男性
また、プラスチックなどの私たちに身近な石油化学製品は炭素(C)と水素が結びつき、あらゆる物の元になっている大切な物質です。
現在、気候変動の問題となっているCO2も炭素が含まれていますが、植物や私たち人間も炭素からできており、炭素は本来はとても身近な存在です。
そのため、CO2の削減に向けては、CO2自体も炭素資源として循環し、利用(カーボンリサイクル)していくための技術開発が進められています。
女性
様々な素材の拠点である川崎臨海部が製品は、製造のプロセスも大きく変わるときであり、コンビナートだからできる川崎発のサステナブルな製品の開発など、ユニークな取組が期待されています。
男性
ボトルとマスク
不織布のマスクも
実はプラスチックでできています。
『廃棄物がなくなる!?サーキュラーエコノミーの取組』

カーボンニュートラルと合わせて注目されているサーキュラーエコノミーは、モノやサービスを生み出す段階から、リサイクル・再利用等を前提に設計し、できる限り新たな資源の投入量を抑えることを目指す経済活動のことを指します。

あらゆる製品の製造拠点である石油化学コンビナートもそのようなビジネスのあり方、仕組みづくりが求められています。

花王川崎工場